2010年5月27日

【メッセージ】 飯田哲也@環境エネルギー政策研究所

iida.jpgいよいよ明日はお披露目上映会!急遽トークゲストに飯田哲也さんにお越しいただくことになりました!飯田哲也さんよりメッセージを頂戴しました!

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エネルギーデモクラシーの現場とその落差
   〜この国の病根と、未来づくりの鍵が見える

 飯田哲也@環境エネルギー政策研究所

当事者である祝島島民の傍聴を認めない上関町議会。
押しかけた祝島島民を、能面のような無表情で押し返す上関町職員。
埋め立て許可を出しながら、責任逃れの言い訳をする二井関成山口県知事。
海上封鎖をする祝島島民に、海の上から拡声器で一方的に叫ぶ中国電力社員。
   しかもそれが中国電力と祝島島民との「初めての対話」だという。
東京の会議室。祝島島民に無責任な「ご説明」に終始する経済産業省官僚。

  21世紀の、成熟した民主主義の国であるはずの日本で、現実だとは信じがたい「映像」が次々に映し出される。共通しているのは、自分に割り当てられた役割だけに閉じこもり、向かい合っている祝島島民の姿を見ようとせず、言葉を聞こうとせず、自分たちがしていることの意味を考えようとしない、そういう思考停止した、無表情の男・男・男・・・。これら「思考停止のオヤジども」が、地域社会を破壊し、今や日本全体を壊しつつあることが、観客席にははっきりと見えてくる。日本で、自然エネルギーの普及も阻んでいるのも、まったく同じ人たちだ。

 片や冒頭から、山戸孝さんがひじき取りをする姿が大写しとなる。そのひじきは、大釜で茹で、乾燥させ、袋詰めして、全国に送り出され、島の経済を支えている。島では21年ぶりとなる結婚式をあげ、長女が誕生し、島ぐるみで愛され見守られている孝さん一家の日常が伝わる。たわわに実ったびわを収穫する孝さんと、その場でかぶりつく友人たちとの交流。おごそかに執り行われる4年に一度の神舞神事と、帰島した人々で賑わう祝島。そして、毎週月曜日に島で欠かさず行われる原発反対デモ行進を支える、スーパー元気なおばちゃんたち。

 カメラは一転、スウェーデンに飛ぶ。自然エネルギーで地域づくりに取り組む地方都市の女性市会議員。風車の電気で自動車を走らせている男性。自然エネルギー100%の都市を目指す電力会社やエネルギー庁長官。映像は、こうした活き活きとした表情の人たちが織りなす「未来づくりの現場」を映し出し、心の中では、スウェーデンの姿が祝島の未来像として二重映しに見えてくる。

 上関からそう遠くない山口の片田舎で生まれ育ち、スウェーデンで学び、国の環境エネルギー政策に深く関わる私自身にとって、当事者そのものといえる映画であり、現実だ。原発と思考停止のオヤジどもが不毛な二項対立を迫り、日本社会を押しつぶそうとする。地域社会に軸足を置いた自然エネルギーによる建設的な対話と創造が、ポジティブな変化を生み出す鍵だ。
 地域社会の破壊か、未来の創造か。今、その選択は、私たち自身の手の中にある。

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飯田哲也
■プロフィール
環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長。 ルンド大学(スウェーデン)客員研究員。1959年山口県生まれ。自然エネルギーや原子力などの環境エネルギー政策専門家。『21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワークREN21』理事など国際ネットワークも豊富。温暖化ファンドやグリーン電力などを生み出すなど、社会イノベータとしても知られる。中央環境審議会、東京都環境審議会などを歴任、2009年11月には、新政権の25%削減タスクフォース有識者委員、および行政刷新会議ワーキンググループの事業仕分け人に任命された。著書に「北欧のエネルギーデモクラシー」(新評論)、「グリーン・ニューディール-環境投資は世界経済を救えるか」(NHK出版)、 「日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す」(洋泉社新書)など。

 

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コメント[1]

安定した経済成長を維持し、世界的な地球温暖化を阻止する環境問題に対応する為には、エネルギーや資源の希少な日本では、「エネルギーのベスト・ミックス」を追及するしか方法が無いのではないかと思う。
今般の東日本大震災と福島原発事故は、原発推進を過度に進め、
其れが為に、「低位の想定を設定」した事、更には、「想定外の事態に
対しての緊急対応策の欠如」を浮き彫りにした。然しながら、コスト競争
に晒されている事を考慮すると、実践可能な「エネルギーのベスト・ミックス」を作り出さねばならない。歴史の流れが示すように、産業革命は
エネルギーの革新で支えられ、結果、3倍以上の世界の人口を食べさせ、支えている。それ以前の「自然エネルギー」だけの時代には帰れないのではと思料します。