2011年2月13日

「原発」というブラックボックス  鎌仲ひとみ監督作品「ミツバチの~」 (東京新聞 2月11日朝刊)

ユーロスペース公開を前に、東京新聞をはじめ、たくさんのメディアで報道していただいています。

twitterやブログでもたくさんのたくさんの発信をいただいています!ありがとうございます!

東京新聞 2.11.2011.jpg

「原発」というブラックボックス  鎌仲ひとみ監督作品「ミツバチの~」(東京新聞2月11日・北陸中日新聞2月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2011021102000062.html

 使用済み核燃料再処理工場がある青森県六ケ所村の人々を追った「六ケ所村ラプソディー」などで知られる鎌仲ひとみ監督の最新ドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」が、19日から劇場公開される。瀬戸内海の小さな島で原発建設に反対する住民の姿を通じ、風力など自然エネルギーへの転換を求める内容だ。 (小田克也)


 中国電力・上関原子力発電所(山口県上関町長島)の建設計画は一九八二年に浮上。同社は二〇一八年の運転開始を目指し、〇九年、埋め立て準備の工事に着手した。これに対し、海を挟んで向かいにある祝島の住民の多くが抗議行動を続けている。

 作品は、島の住民は約五百人、平均年齢七十五歳、原発反対のデモは千回を超えたと伝える。島にUターンした青年らの姿を通じ、(1)原発による海水の温度上昇などは、希少生物が生息する海域の自然破壊につながる。既に敷地造成などにより影響が出始めている(2)生態系が崩れれば漁業は不可能となり、島民は生活できなくなる-と報告。

 その上で、日本は風力などの自然エネルギーに転換すべきだと指摘。祝島は無農薬のビワ栽培など自然を生かしており、むしろ時代の先端を行く島。こうした取り組みに注目する必要があると強調する。

 埋め立ての認可をめぐる町議会が〇八年九月に開かれ、住民二百五十人が傍聴にやってきたが、入れるのは二十人。住民は「ヒジキが採れないようになったら子供をどうやって育てたらいいのか」などと抗議する。その表情が胸に迫る。

 鎌仲さんは大学卒業後、フリーでテレビ番組の監督などを務めた。転機は九八年のイラク訪問。子供たちががんで死ぬのを目の当たりにして、自主製作によるドキュメンタリー映画へ踏み出した。

 〇三年に「ヒバクシャ-世界の終わりに」、〇六年に「六ケ所村ラプソディー」を発表。今回も製作の動機は共通しており、鎌仲さんは「科学の進歩は、人間の幸福より軍事など人を傷つけることに使われている。それを見せない仕組み、つまりブラックボックスを開きたい」と語る。今回は問題提起にとどまらず、自然エネルギーへの転換という解決の方途を提言した点が特徴だ。

 撮影は、〇八年五月から一〇年三月まで行われた。作品の中で鎌仲さんは「それで食べていけるの?」などと、取材相手に素朴な疑問をぶつける。

 こうした姿勢は日ごろの蓄積から出てきたらしい。自主上映会は三作で千百回を上回り、彼女は半分以上に立ち会ってきた。そのたびに観客の反応を観察し、取材方法に反映させてきたという。鎌仲さんは「観客と一緒に自分の作品を見ると『ああ、ここが分からないのか』と得難いフィードバックがある」。

 今回の作品は二時間十五分。これに対して取材した映像素材は三百五十時間に及ぶ。鎌仲さんは「同業者は小さなやらせをたくさんする。『(取材相手がある場所に座ると)こっちに座って』とか、びっくりする。私はそれを一切しないので三百五十時間もかかってしまう」。

 鎌仲さんは題名に込めた思いについて「ミツバチは蜜を取っても、花を壊さず、受粉で結実を助ける。自然を豊かにしつつエネルギーを得る。人間にもできるのではないか」と語る。三作を通じて取り組んだテーマは大きく、これで一区切り。次は医療に目を向けている。

 ※作品は、東京・渋谷のユーロスペースで19日から上映。

 

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「エネルギー問題に当事者の声を」 鎌仲ひとみ監督に聞く
(PJニュース 奥田みのり)
http://www.pjnews.net/news/377/20110209_1

「40年以上も日本のエネルギー政策は原子力を推進し続けている。そのような大きな力にどう向き合うのか、私たちは今こそエネルギーを選択しなければならない」と語る鎌仲ひとみ監督

 【PJニュース 2011年2月11日】山口県・祝島(いわいしま)とスウェーデンで、エネルギーの自立に取り組む人々を追った映画『ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ監督)が、2月19日より、 渋谷・ユーロスペースで始まる。『ヒバクシャ―世界の終わりに』、『六ヶ所村ラプソディー』に続き、鎌仲ひとみ×グループ現代が世に問う<三部作>の、最後のピースだ。

 

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 webDICE

 「誰かが未来をバラ色にしてくれるということはない。今やることが未来に反映していくのだから」鎌仲ひとみ監督が世界に投げかける3部作
http://www.webdice.jp/dice/detail/2869/ 
 

 『六ヶ所村ラプソディー』は、誰が悪いとかそういうことで描いていません。

──新作『ミツバチの羽音と地球の回転』は映画三部作の完結編ということですが、環境やエネルギー、核の問題をテーマにして作品を撮り始めたきっかけは何だったんですか。

1998年に、湾岸戦争直後からイラクへ赴き医療援助を続ける日本人女性と出会い、イラクの子供たちにガンや白血病が多発している上、経済制裁が治療を阻んでいることを知りました。テレビ番組の製作をしていた私は、それがどれほど大変な状況なのかを現地の普通の人々に会って話を聞きたいと思い、取材を始めました。湾岸戦争の劣化ウラン弾が子供たちの病気や夥しい数の障害児の原因になっているかもしれないということでしたが、戦争から7年が経っているし、半信半疑でイラクへ行きました。イラクに到着した私は、真っ先に白血病病棟の子供たちに会いに行き、子供たちが実にあっけなく死んでいく現実に直面しました。
白血病を発症して2年の14歳の少女・ラシャは出会って数日もたたないうちに感染症にかかり、抗生物質も輸血用の血液もない病院で、なすすべもなく死んでいきました。まだ元気だったとき、ラシャは小さな紙切れに「親愛なるカマ、どうか私のことを忘れないで」と書いてくれた。私は日本に帰っても忘れないよ、と返しましたが、ラシャの死によって、この言葉はまったく違う意味になってしまいました。

──帰国後、鎌仲さんが撮影したイラクの現状は日本でどう受け止められたんですか。

そのときの取材で劣化ウラン弾との関連をはっきりさせることはできませんでしたが、放射能との関連が疑われる病気がすごく増えていて、イラクの医師たちは困惑し、病気の子どもを抱える親たちは苦しんでいる、というような日本に全く伝わっていないイラクの現実を撮影することができました。けれど日本のマスメディアが報道してきたイラクのイメージと、私が撮ってきた現実が違いすぎて、放映できないと言われた。私はどんな妥協をしても最小限、イラクの子供たちが治療されずに亡くなっていく事実、経済制裁の非人間性を番組で伝えたかった。結局、編集をし直して、お蔵入りは避けて放送しましたが、番組放送後、何の反応もなかった。何百万人もの人が見ているはずの番組なのに。日本の人たちの関心を喚起することができなかった。それがすごくショックでした。私は、知らせることで変化があるんじゃないかと考えていた。知らせることで、薬がより多く届くとか、あるいは経済制裁が緩和されるような助けになると。イラクの人たちにもそうやって説得して撮ってきたのに。

 (ぜひ全文お読みください)

 

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